~混合ワクチンに悩む飼い主へ。正しく選ぼう~
「混合ワクチン」の接種。
毎年のように動物病院からお知らせが届き、特に深く考えずに「病院がすすめるから」と言われるがまま、5種、7種、果ては9種の混合ワクチンを接種している飼い主さんも多いかもしれません。
たくさん守れた方がいいからとりあえず10種打とう!そう思われるかもしれません。
しかし実は、この「何種類接種するか」という判断は、犬の健康に大きな影響を与える問題です。
むやみに種類が多いワクチンを打たず「うちの子はどこまで必要かな?」と考え飼主が選んでください。
狂犬病ワクチンは日本の法律で義務ですが、混合ワクチンは飼主の判断、任意です。
混合ワクチンの種類
まず、混合ワクチンには「コアワクチン」と「ノンコアワクチン」があります。
コアワクチン
コアワクチンとは、命に関わるような重篤な病気を予防するもので、どの犬にとっても基本的なワクチンです。
代表的なのは、犬ジステンパー、犬パルボウイルス感染症、犬アデノウイルス感染症(肝炎)の3つです。
これらは「3種混合」と呼ばれることもあります。
ノンコアワクチン
ノンコアワクチンは、生活環境や地域、生活スタイルによって必要かどうかが変わるワクチンです。
例えば、犬コロナウイルス、レプトスピラ、パラインフルエンザなどが含まれます。
これらはすべての犬に必要なわけではなく、よく山や川にレジャーやキャンプに行くなどの「必要な犬にだけ」接種すればよいものなのです。
動物病院によっては「念のため」と言って、全ての種類を含んだ8種や9種の混合ワクチンを毎年接種させるケースもあります。
中には、飼い主が特に情報を調べず「先生が言うから大丈夫」と受け入れてしまい、必要のないワクチンを何年も打ち続けている例も見られます。
ワクチンの副作用・リスク
ワクチンには副作用やリスクもあるということを忘れてはいけません。
アレルギー反応、元気消失、嘔吐、下痢、そして稀に命に関わるような重篤な反応が出ることもあります。
だからこそ「打てば安心」ではなく、「何を、どれくらい、どの頻度で打つか」を飼い主がしっかり判断することが大切なのです。
海外のワクチン標準(ワクチネーション・ガイドライン)
特に日本では「毎年接種」が未だに一般的ですが、アメリカや欧州ではすでに3年に1回の接種が標準となっていることをご存知ですか?
アメリカの動物ワクチンに関する専門団体である AAHA(アメリカ動物病院協会) や WSAVA(世界小動物獣医師会) は、犬の混合ワクチンについての「ワクチネーション・ガイドライン」を発行しており、コアワクチンに関しては3年に1回の接種で十分な免疫効果が得られることが科学的に証明されています。
私たちの日本のワクチン選択
日本でも一部の獣医師や飼い主の間では、このガイドラインに基づいた接種スケジュールを取り入れる動きが出てきています。
さらに「抗体価検査(こうたいかけんさ)」といって、実際に犬の血液を検査し、今の免疫状態を確認することで、まだ十分な抗体があるなら接種を見送るという方法もあります。
大切なのは、すべての犬に同じ接種をするのではなく、年齢、体調、生活環境、外出の頻度などに応じて、オーダーメイドで考えるのが理想です。
犬の混合ワクチンの結論
獣医師に勧められたからといって、そのまま受け入れるのではなく、「それはうちの犬にとって本当に必要か?」と、納得できるまで質問してみてください。それが結果的に、愛犬を守るいちばんの方法です。
何種の混合ワクチンを選べばいいの?
居住地や生活環境、活動範囲によって違ってきます。
- 3~5種・・・基本的に室内で飼っていて、散歩の時に家の近くを歩く程度
- 9種~・・・山や川にレジャーやキャンプに行く、家の近くが田んぼや畑が多い
ワクチンは大切な医療行為ですが、「打てば安心」という思い込みはもう古い考え方です。必要なものを、必要な時に、正しく接種すること。それがこれからのワクチンとの正しい付き合い方ではないでしょうか。